今日は私がカギ当番

地元のファミレスで働こうと思ったのは、友達の多くがそこで働いていたからであって、憧れの先輩がそこでバイトしていたからでは、決してない。野球部のエースで4番バッターでもある、学校中の人気者な彼に近づきたかったわけでも、決してない。ましてや何のとりえもない、地味で目立たない私のことを先輩に覚えてもらおうなんて思ったわけでも、決してない。ただ私はお金が欲しくて、たまたま選んだバイト先がそこだっただけだ。

だけど真面目が取り柄の私なので、どういうわけか店長に気に入られてしまった。私がホールに入る時は自然とリーダーを任されるようになり、ついには店を開けるカギ当番までお願いされることになった。普段は信頼されているパートのおばさんたちがカギ当番を担当しているのだけど、土日はアルバイトがカギを開けることになっているため、そのカギ当番に多数のバイトの中から私が選ばれてしまったのだ。

そして今日、私はカギ当番だった。しかもキッチンで働く先輩と同じシフトだ。私と先輩、それからもう一人のホールの女性アルバイトと3人で開店準備をすることになっていた。絶対に遅刻なんてできないし、前日から楽しみで仕方なかった私は早く目が覚めてしまい、準備も早く終わったので早めに店に行くことにしたのだった。だけどまさかそのせいで、あんなものを見てしまうなんて…。

私が店に着いたのは、出勤予定の30分も前だった。だからきっと誰もいないはず…と思っていたのだが、裏口の方から何やら声がする。先輩の声だ!とわかった私は考える間もなく顔を出したのだけど…そこには先輩ともう一人の女性アルバイトが、楽しそうに喋っているところだった。しかもありえないくらい密着して。そのとき二人に気づかれてしまい、私達の間には相当気まずい空気が流れた。

数週間後、私はその店を辞めることにした。先輩に付き合っている人がいるとわかったからでは、決してない。